いじめられ体質の基礎のできた幼稚園。
良い悪いではなくウメちゃんに向いていないご立派な幼稚園でした。
少人数幼稚園
完全に良い幼稚園もなければ完全に悪い幼稚園もない。
そうは思うんですけどね。
ウメちゃんをいれた幼稚園に関して言えば、大失敗でした。
もちろん子どもによって向き不向きがあるので、ウメちゃんを預けるのには失敗だっただけで、全てにおいてよろしくない幼稚園というわけではないんですけど…
そもそもが不穏な幼稚園でした。
仮に光明幼稚園と呼ぶことにします。
自宅に近いお寺が経営するこの光明幼稚園。
環境も良く、園長先生は長い長い髭の仙人みたいな人の良さそうなおじいちゃん。
この仙人が本当に仙人のような人だったのが、そもそもの問題だったのかもしれません。
ウメちゃんは前述のようにちょっとよく言えばおっとり、悪くいえばどんくさいところのある子で、幼稚園の面接用に一生懸命色々言わせようとする親が
「あなたのお名前は?」
と言っても、ぽや~んとした口調で
「……う~め~…」
というのがやっとだったので、親の欲目を思い切りいれたとしても、競争社会ではやっていけない。
楽しく穏やかに健やかに過ごしてくれる事以外はたいして望んでいなかったので、最初に
「ウメはお受験とかはさせる気はありませんので、そういう方向の教育は望んでません。
ただ、道徳や情操教育はしっかりして頂ける所にお預けしたいと思っているのですが…」
と、言うと、仙人園長はにっこり
「うちはお受験幼稚園ではありませんし、情操教育はかなりしっかりとやってますよ」
と、もうこれ俗世の穢れなどここにはございませんとばかりの神々しい笑顔でした。
さすが仙人のお膝元!とママ子は勝手に安心したわけなんですが、ここで信じられない話が……
ウメちゃんは相変わらずぼ~っとしてましたが、入園に問題なしと入園許可を頂いて、さて、同じクラスになるお友達の数は?となった時に言われました。
「来年度入園する園児はウメちゃんをいれて4名です」
は?4名?14名の間違いではなくて??
さすがにぽか~ん!です。
いやいや、なんで?
確かに少子化とは言うけどね?
そんなにこのあたりって子どもがいないの??
それで経営成り立つの?
ウメちゃんは実は2000年生まれ、いわゆるミレニアムベイビーです。
ウメちゃんが生まれた病院は本来は全個室の病院だったのに病室が足りなくなって、大きな部屋は相部屋になったという、近年稀に見るベビーブームだったわけですが…
ぽかんとする親の前に立ちはだかる初老の女性。
実質幼稚園を仕切っている大ベテランの主任(?)、名を仮にクマ子先生としましょう。
そのクマ子先生がにこやかに…でも何故か威圧感あるんですけどね、のたまわりました。
「最近の親御さんが皆さんご自身が楽だと言う理由で園バスがある幼稚園を選択されてしまうので。
当園はお子さんときちんと歩いて登園すること、そういう規則になっております」
歩くこと、歩かせることに意義がある。
なるほど、なるほど。納得。
それは随分ときちんとした規則に思われました。
もう初めての子育てですもん!やる気は満々ですよ。
子どものために一緒に歩いて登園くらい大した手間ではないですよ。
少人数という事はそれだけ先生の目が行き届くってことでしょ?
4人に1人の先生が付くって、なんてお得なんでしょう!
能天気に考えた親が馬鹿でした。
ええ、馬鹿だったんですね。
すごく過疎な地帯で周りの幼稚園も皆人数が少ない…
そういう場所でなく、他は人数が多いけどその幼稚園だけ人数が少ない、そんな幼稚園の場合、何故そこだけ園児が少ないのか、これを正確に知る事は重要です。
もちろん最初にも書いた通り、それがすなわち全ての園児にとって、幼稚園として好ましくないからというわけでもありません。
今にして思えば、妹のサクラはこの幼稚園にいれていたなら、とても伸びたのだと思います。
ただ、ウメちゃんにとってはこの幼稚園はまさに地獄のような場所でした。
幼稚園児にしてノイローゼになりましたから。
幼稚園次第である程度社会の中での性格の第一弾が出来てしまうので、幼稚園の選択、これはいじめられっ子にしないために、とても重要だと思います。
ちなみに…入園後しばらくして…この幼稚園に関して流れているらしき噂を聞きました。
『光明幼稚園ではクマ子先生が箒を持って園児を追いまわしている』
いや、これ自体は単なる噂なのですが、火のない所に煙は立たない。
容赦ない教育、そういう意味ではある意味事実ではあったのです。
大変立派な幼稚園
ウメちゃんが入園した光明幼稚園。
ここはある意味立派な幼稚園でした。
まず園児がしっかりしている。
入園式に臨んで、列席した年中、年長の園児たちはきちんと座って身じろぎ一つ、おしゃべり一つする事なく、式の終わりまで黙って真面目に先生を始めとする方々のお話をきちんと聞いています。
ママ子もパパ子もこれには本当に感動いたしました。
きちんと躾ければ園児だって公共性も礼儀も身につくのね、と思いました。
その前に見学に行った区立の幼稚園は、どう考えても自由時間でもなさそうな時間帯に園児達が新聞紙を丸めた棒を持って走り回っていたので、おいおいと思ったのもあります。
だからやはり私立はきちんとした教育をしてくれるのだと、初めての子を立派に育てたいと意気込んでいる初心者両親をおおいに満足させてくれたのです。
そう言えば…入園前の年に見学にきた発表会では年中の園児は宮沢賢治の詩を、年長の園児は方丈記を暗証してましたし、年長になると茶道が必修になるとも聞いていました。
もうこれハイスペックだよねっ!
と、帰りに大はしゃぎする両親。
今にして思えば浅はかでした。
子どもって本来ははしゃぐものじゃない?
それが1年通っただけで全員きっちり身動き一つしなくなるって、どういうやり方してるの?
10人以上はいる園児が1人もはみ出さないって普通じゃないよね?
…と、気づくべきでした。
ええ、それが能力を磨くためのお受験幼稚園なら良いんですけどね。
名前聞いてもボ~っと「ウ~メ~」としか言わないような我が子が果たしてそこでやっていけるのか…そこを考えなかった親の浅はかさが、ある意味ウメちゃんのいじめられっ子気質を育ててしまったように、今では思います。
まあそんな感じで入園した幼稚園ですが、本当に厳しく、また、園児を含めて全ての人間がきちんとした能力を求められる場所でした。
その代わり前述のようなお行儀はもちろんのこと、箸の上げおろしや服のたたみ方など、生活面での基本的な事もきっちりしつけて頂けます。
鉄は熱いうちに打て!と申しますが、その時は本当にその通りだと思ってしまったのです。
転園か否か
まあその幼稚園はそこまでまだ色々出来ないでいたウメちゃんにはそもそもが向いていなかったのだと思います。
おそらく緊張もしたしプレッシャーもあったでしょう。
でもそんな幼稚園の中でのウメちゃんの癒しは担任の先生でした。
良くいえばおっとり、悪くいえば少し鈍くさそうな、今にして思えば少しウメちゃんに似た感じの学校を出たての可愛らしい新人のお嬢さんで、そうですね、仮にウサ野先生とお呼びしましょうか。
「ウメちゃんはいつも笑顔が可愛らしいんですよ。
とても癒されます」
と、何かの拍子にそんな事を言って頂いた事を今でもなんとなく記憶してますが、思えばその幼稚園で“出来ること”ではなく、子ども自身を褒めて下さったのは、あとにも先にもウサ野先生だけだったように思います。
そんなウサ野先生、ウメちゃん達が入園して3カ月、1学期でクビになっちゃいました。
いわく…やるべきことを速やかに出来ないから…だそうで…。
普通に考えれば犯罪レベルのことをやらかさない限り、雇って3カ月で見限るっておかしいです。
園児の情緒面からしても、生まれて初めて親から離れての集団生活での保護者であるはずの先生がいきなり3カ月でいなくなってしまうってどうなんでしょう?
ということで、その手紙が来た時、我が家は夫婦で話し合いました。
ウメちゃんはウサ野先生が大好きです。
幼稚園で唯一の癒しです。
事情をお聞きする手紙も書いたのですが、大切な園児を預かっているのに怪我をした時など速やかな対応ができないのは問題だと言う事を繰り返されるばかりで。
園児に対してもその後の書類仕事に関しても、とにかく反応が遅いのだという事でした。
園児に対してもその後の書類仕事に関しても、とにかく反応が遅いのだという事でした。
確かに気が利くタイプではなかったと思います。
この幼稚園、よく『よろしければ~して下さい』という言葉を使うのですが、この場合、空気を読んで絶対にそれをしなければならないんです。
そういう空気をまだ読めない感じだったんですね。
一度そんな現場に言わせて、職員の方が「ウサ野先生は何故~なさらないのかしら?」と非常に怖い口調でおっしゃってたのを聞いて、パパ子と「大丈夫かな?」と言っていた事もあって、おそらくそういう類のことなんだろうな…と、思っていました。
でも新人ですよ?
3カ月前まで学生さんだったんです。
結局その後、クマ子先生が担任として付かれる事になりましたが、手が空いているならフォローして教えてあげれば良いじゃないですか。
即戦力が欲しいなら新人じゃなくベテランを雇えば良いわけですし、わざわざ新人を雇っておいて全てを完璧にこなせと言うのは、無理があるように思いました。
新人の先生を育てられないで即切り捨てるような幼稚園に、子どもを育てていけるんだろうか…と、のんき者だった両親もそこで初めて園に疑問を持ったのです。
そして転園をするか否かを考えました…が、転園をするにしても近所に幼稚園が他になく、遠くの幼稚園を探すことになりますし、そもそもが入って1年もしない転園になるのも気になります。
そして結局、園の方向性に多大な疑問を持ちながらも継続して通わせる事に。
これが本当に間違いだったのを知るのは、それから2年ほどあとのことでした。
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